アフターアワーズのセッション再開

 鳥取市のジャズ拠点「アフターアワーズ」がおよそ2カ月ぶりに営業を再開され、定例の「ウェンズデーセッション」が再開されました。新型コロナウイルスという予想だにしなかった難敵の出現で、国民全体が活動自粛を求められる中、特にクラスター(感染者集団)が発生したライブハウスなど4業種・業態は長期休業を余儀なくされました。県境越えを自粛するという前代未聞の事態を現実に体験しようとは夢にも思っていませんでした。

  さっそく、私も楽器を担いでうかがいました。うお、弥生川の路地を入ると楽器のナマ音が聞こえてくるでないの!2月下旬以降、集まって演奏する機会はなくなり、人けのない鳥取港とかで深夜わびしく楽器を吹いたりしていたので、やっぱりセッションしたい、バンドしたいとの欲求が募っていました。

 店内は客席を3分の1に減らした上、ステージと客席の間にやカウンター席にビニールの仕切りが設置され、感染防止対策を講じた上でセッションが行われていました。よく知った顔と音…数カ月のブランクが一瞬にして埋まったような気がしました。同時に、当たり前のことが当たり前にできるありがたさ。長い休業を経て再開された松本さんと菊池さんの英断にも感謝しています。

 新型コロナウイルスは、当初考えられていた「インフルエンザと同じ」との楽観は消し飛び、極めて感染力が強く、症状にも個人差があるとの認識が一般化しています。第2波は予断を許さず、今月19日以降「観光目的でも越境OK」となれば、鳥取県内も相応のリスクにさらされますが、当たり前の街の風景を維持するためにも、感染発生の状況を踏まえた活動の再開は必要となってくるのではないでしょうか。しばらくは「活動と自粛」を繰り返していく状況が続くのではないかと思います。

 それにしても、やっぱり仲間と音楽を奏でることは楽しい。互いにずれても、そこで合わそうとする意志が働く。他の人の演奏に触発されて、今その場で沸き上がった感情を楽器で具現化する臨場感。思うことができなかった無念さやギターのコードが強く入ったのを踏み台に予想外の音に導かれたスリル。混沌とした空気とビートの揺らぎ。この場であるが故にこの音を選んだ必然性がそこに居るという確信を深めることに改めて気付く。

 物事に教訓はないのかも知れないし、あるように想像を巡らすことはできるかも知れないですね。夭逝のジャズマンで私の大好きなエリック・ドルフィーは36歳で吹き込んだラストアルバムの最後に「音楽は空中に放たれると、二度とそれを取り戻すことはできない」との肉声を残しています。ライブの最後にそのようなことを言う真摯さに心を打たれますが、音楽に限らず、私たちの人生は全てそうなのでしょうね。

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